大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)5470号・昭45年(ワ)1269号 判決
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〔判決理由〕第一 本訴請求について
一、事故
請求原因第二一の事実は当事者間に争いがない。
二、責任原因
請求原因第二二(一)の事実は当事者間に争いがない。
そこで被告の免責の抗弁について判断する。
<証拠>を綜合すると、本件事故現場は南北に通ずる幅一八、三メートルの道路上で、右道路の中央部分は五、九メートル幅の市電の軌道敷で石畳が敷かれており、その東側および西側にそれぞれ幅六、二メートルのアスファルト舗装の車道部分が存し、事故現場の南には東西に通ずる幅七、三メートルの道路との交差点があつて、その交差点の北側入口手前の南北道路上に幅四メートルの横断歩道が設けられており、附近の最高速度は毎時四〇キロメートルと指定されており、事故当時は雨で路面がぬれていたこと、被告は、加害車を運転して時速約四〇キロメートルで北から南に向つて軌道敷内の東側部分を進行中左前方の横断歩道の手前で数台の自動車が停止しようとしているのをみて徐々に減速し、時速二五ないし三〇キロメートルで進行していた際、前方の軌道敷内の自車の進路上に同方向に進行中の被害車が停止しようとしているのを認め、急ブレーキをかけたが及ばず、加害車の前部正面を既に停止していた被害車の後部正面に追突させたこと、原告は、被害車を運転して時速約三〇キロメートルで北から南に向つて東側の車道部分の軌道敷寄りの部分を進行中前方を同方向に進行していた数台の自動車が横断歩道の手前で順次停止しようとしているのをみて、進路を右に変更して西側の軌道敷内を進行して先行車を追い越し、横断歩道手前まで進行しようと考え、時速約一〇キロメートルに減速してハンドルを右に切つて軌道敷内に進入したが、前方の交差点に警察官の姿を発見し、軌道敷内を通行することが禁止されていることに気づいて直ちに急停車した際本件事故が発生したこと、追突地点は横断歩道の北端から約二一、五メートル北方であり、被告が停止しようとしていた被害車を始めて認めた際の加害車と被害車との車間距離は約七メートルで、被害車は被告が始めて認めたときから約二メートル進行して停止したこと、原告が被害車の進路を変更するべく右に転把してから停止するまでに約一三メートル進行したこと、被害車は右に転把したとき右側の尾灯が点滅するようになつていることが認められ、前記乙第二八号証ならびに原告および被告各本人尋問の結果中右認定に反する部分はたやすく措信し難く、他に右認定を左右しうべき証拠はない。以上の事実によれば、被告は、加害車を運転中、前方を注視するべき注意義務を怠つた過失により、被害車が右に転把して軌道敷内の自車の進路上に進入しようとしているのに気づかず、被害車が完全に進路を変更し終つて停車しようとしているのに被害車との距離が約七メートルにまで迫つて始めてこれに気づいたため、事故の発生を避けるための適切な措置をとるいとまがなく、本件事故を発生させたものと認められる。
被告は、被害車が進路変更を始めたときの加害車と被害車との車間距離が一〇ないし一一メートルであり、加害車の速度からみて追突を避けるのに必要な車間距離がなかつた旨主張するが、前記認定の事実によれば、被害車は進路変更を始めてから被告が被害車を始めて認めるまでの間に時速約一〇キロメートルで約一一メートル進行し、被告が被害車を認めたときの加害車と被害車の車間距離は約七メートルで、被害車が進路変更を始めてから約一一メートル進行している間の加害車の速度はおそくとも二五キロメートルであつたことが認められるから、被害車が進路変更を始めた際の加害車と被害車との車間距離は少くとも二三、五メートルはあつたものと推認され、被告が被害車の動静に注視を怠らなかつたならば、被害車の進路変更に際して直ちに警笛を吹鳴して警告するとともに制動措置をとることにより十分追突を回避することが可能であつたと考えられるから、被告の右主張は理由がない。
従つて被告は、加害車の運行供用者として原告に対し、本件事故による傷害によつて生じた損害を賠償するべき義務がある。
三、損害<中略>
(六) 休業損害一、三二〇、〇〇〇円
<証拠>によれば、原告は、事故当時四一才で、昭和四一年一月から有限会社土福建材店に勤務し、得意先廻りおよび自動車運転に従事し、同月から同年七月までの七ケ月間に三八五、〇〇〇円、一ケ月五五、〇〇〇円の収入を得ていたこと、原告は、同月末日建材業を自ら独立して経営するために右会社を退職したが、右建材業を始めて間もなく、本件事故によつて受傷したので、廃業を余儀なくされ、その後は全然就業していないことが認められ、右認定を左右しうべき証拠はない。以上の事実によれば、原告は、本件事故がなければ、一ケ月に少くとも五五、〇〇〇円の収入を得られた筈であるのに、本件事故による受傷のため、昭和四一年八月一五日から症状が固定するまでの二年間休業を余儀なくされたもので、一ケ月五五、〇〇〇円の割合による二四ケ月分合計一、三二〇、〇〇〇円の収入を失つたものと認められる。
(七) 将来の逸失利益
一、九三八、五一九円
前記三(一)の原告の傷害の部位、程度、治療の経過および期間、後遺障害の内容、程度を合わせ考えると、原告は、右後遺障害のため、昭和四三年九月の症状固定時から将来七年間は労働能力が五割減退するものと認められるから、原告の将来の逸失利益を、月収五五、〇〇〇円とし、年毎のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると別紙計算書(2)記載のとおり一、九三八、五一九円となる。
(八) 慰藉料 二、〇〇〇、〇〇〇円
前記三(一)の原告の傷害の部位、程度、治療の経過および期間、後遺障害の内容、程度を合わせ考えると、原告が本件事故によつて蒙つた精神的損害に対する慰藉料額は二、〇〇〇、〇〇〇円とするのが相当であると認められる。
(九) 過失相殺および損害の填補
前記二の事実によれば、本件事故発生については、原告にも被害車を運転中横断歩道附近で先行車を追い越そうとし、右後方からの車両の有無を十分確認することなく、右に転把して進路を変更して軌道敷内に侵入し、しかも横断歩道まで二一、五メートルも距離のある地点で、急停止の必要もないのに、進路変更直後に急停止をした過失が存したものと認められ、原告の損害額算定についてしんしやくするべき原告の過失割合は六割とするのが相当であると認められる。
(山本矩夫)